遺伝子と自分(5)

アメリカ人・日本人の人種認識の違い

アメリカ人は雑種なのが当たり前だ。アメリカ人に血筋を聞くと, 半分ドイツで、4分の1北欧、あとの4分の1はオランダ、などとすらすらと返ってくる。 なら民族はと聞くと、ドイツだな、おれビール好きだし、と自分の事を「ゲルマンのアメリカ人」だと、民族と国を別に認識している。

アメリカ人にとって人種は自分自身で、民族は自分の伝統と血筋だ。民族は自分の血筋の一つだから選択の自由まである。そして大切なのがアメリカ人は自分の人種や民族を自己肯定の材料として捉える。だからおおっぴらに話す。

だが日本人はどうだろう。日本人にとって人種は民族で国だ。自分達の遺伝子は人種が混ざってるなんて考えもしない。だがもし混ざっていたらどうなるだろう。例えば日本人だと思って接してた相手が実は一部違う人種だとしよう。日本人にはそれだけで大きな違いだ。混ざっていた人種によっては悪意の対象にさえなる、と言っても大げさではない。

そしてさらにそれが自分の立場だったらどうなのだろう。

アメリカ人は自分の人種組成を知ることをアイデンティティーの確立ととらえるが、日本人にとってはアイデンティティーがひっくり返されてしあう可能性もある。日本人に自分の人種組成を知るメリットはあるのだろうか。

自分の人種組成と日本の歴史

23andMeの人種別組成検査は遺伝子に含まれる人種の構成がわかるというものだ。どうやってわかるんだろう、と難解な人種別組成検査の説明を読んだらちょっとだけわかった。ようするに既存データの統計をもとにやっているようだ。確率的な事になるようだが、自分のような東アジア人の検査はかなり正確らしい。

で、この検査結果だが、自分は92%日本人だ、と出た。 残りの8%はいろいろな東アジア人種が混ざっているそうだ。

9割以上も日本人だと捉えるのか、9割しか日本人でないとみなすか。

両親の家系は知る限り代々日本人だ。自分の父方のご先祖様なんか、へっぽこだがいちおう戦国武将だ。すっかり純血日本人種のつもりだったがその他アジア民族8%だと、どういうことだ。と首をかしげる事になった。

だが、これこそが普通の日本民族なのかもしれない。島国で孤立していたとは言え、この2000年、せいぜい100世代の間でさえ日本列島の人類は渡来弥生人や征夷討伐だのと違う遺伝子との交配を繰り返し取り込んできた。現代日本人はある程度、他人種が混ざってるのが普通だろうというのは良く言われる事だ。

だから9割以上も以下もない。全部ひっくるめて日本人なのだ。少ないながら多民族の痕跡を持つ自分の遺伝子は、何万年も遡る日本の歴史の記録でもあるわけだ。

(続く)