Category Archives: アメリカで仕事

クラウドの悪夢 (3)

Intuitのシステムダウンに見るポイントをもう二つほど。

復旧しかけたIntuitのサイトにCIOの名前で謝罪と説明文を掲載していたが、システム停止の理由を「メンテ中に間違って電源を落とした」と説明していた。 この説明はITプロフェッショナルから見ればおかしい。

ミッションクリティカルをうたうデータセンターで電源の冗長化は最初の課題だ。一系統がダウンしたらもう一系統の電源に切り替えて運用を続行せねばならない。 おそらく実際はそれぐらいの事はしていて、何らかの理由で全系統を切ってしまわなければならなかったのだと思われるが、説明にそれが反映されていない。

それどころか簡単に電源が落ちて止まってしまうインフラしか持っていなかったと思わせる説明だ。ITプロフェッショナルだったら忌避すべきイメージを平気で出してしまっているのだ。

これはITをただコストのかかる必要悪と見なす昨今のアメリカのコーポレートカルチャーと関わりがある。 ITが技術革新による効率化をもたらしたのは昔の話で、アメリカでは肥大化したITは真っ先に合理化のやり玉にあげられるご時世なのだ。 IntuitのCIOもオペレーション出身でIT技術畑を歩いてきた人ではない。

ITのトップになるには、例えば掃除夫が間違って電源を切ってもダウンしない強固なインフラを築く能力より、コスト減らしの手腕の方が優先されるのがアメリカのIT社会の現状だという事だ。

会社の価値(株価)の維持・成長のためにどんどんコストを削り続け、簡単に止まってしまうようなインフラで運営されているようなクラウドやサービスプロバイダーは今もあるだろうしこの先も増えるだろう。クラウドはユーザー側には不透明なものだから停まって非常事態が起きるまでわからない危うさは消えない。 クラウドに信頼性は本当にあるのだろうか。

最後に、クライシスにあたってのソーシャルメディアの利用として、今回Intuitのサポート掲示板には商品企画部の人員が出てきて怒るユーザー達の相手をしていた。 同じ説明を繰り返すだけで大した事は出来なかったが、対外的に沈黙しているよりは遥かに好感が持てた。 Intuit側の人間は顔写真をアバターにしているので、例えば若い女性の顔写真付きで出てくるコメントにはキツい事を言いかねるような印象もあった。 今回のように会社に世間の眼が向いたとき、プレスリリースや記者会見よりTwitterやサポート掲示板の方が情報伝達手段としての効用が大きいのを実感できた。

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クラウドの悪夢 (2)

Intuitのシステム停止から得る教訓はいくつもあるだろう。クラウドという点に関してワタシはこう見る。

まず、SAASのようなクラウド上のサービスに頼っているユーザーにはバックアップシステムが無い。クラウドが使えなくなればビジネスは完全停止。お手上げだ。自前でバックアップシステムも含めたインフラを整えなくてすむという理由でクラウドを利用しているから当たり前だが。

またクラウドを利用するユーザーは自分たちが使っているクラウドサービスの信頼性を判断する能力が無い。そんな判断ができるIT技術力に投資しなくてよいからクラウドを使うのだからこれも当たり前だ。

ユーザー達はITインフラの投資やメンテのコストを免れる代わりに自分のビジネスがいつどれだけの期間完全停止してしまうかわからないリスクを抱えているのだ。今回のように大規模なシステム停止があったりしてそんなリスクが知れ渡ってしまえばこの先クラウドの発展にも影響してくるだろう。

それを考えると将来システムダウンなどのリスクマネジメントはクラウドサービスの一部として提供されるようになるべきなのかもしれない。オプションとして別コストなら選択もユーザーの自由だし、通常サービスと違った利益マージンの設定にできればビジネスにもプラスだ。

また、そんなビジネスモデルが可能ならクラウド使用の安心を売り物にするセキュリティ市場が出来るのかも知れない。これは起業家達にとってはある意味チャンスでもある。 (続く)

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クラウドの悪夢 (1)

ウチのカミサンは小さいながらビジネスをやっていて、クレジットカードの決済にIntuitという会社のサービスを使っている。 IntuitというのはTurboTaxやQuickenと言った一般向けの経理・税金ソフトのシェアでアメリカ一の大手の会社だ。 デスクトップソフトだけでなく、インターネット上でソフトをサービスとして売るという最近流行のSAASクラウドモデルも積極的に取り入れ、年商$3.3billion , 円換算でざっと30億を達成している。

一昨日から昨日にかけてこのIntuitのオンラインサービス全部一斉にダウンし、なんとそのまま約24時間ダウンし続けるという事態が起きた。

これはユーザーに突如として深刻な事態を引き起こした。例えばウチのカミサンは売り上げも商品もあるのに決済が出来ないので出荷不能になってしまった。 カミサンのビジネスは決済できなくても売り上げは入り続けるので復旧さえすれば大きな損にはならない。だが、オンライン版の経理ソフトを使っていたユーザーは見積もりも請求書も作成できなくなり、カード決済をIntuitと直結して自動化していたユーザー達は売買のトランザクションを終了できなくなってしまった。

つまり積極的にIntuiのクラウドサービスを取り込んでいたユーザー達は唐突に売り上げが止まりお金の出し入れが出来なくなり、ビジネスが停止してしまうという悪夢の状況になってしまったのだ。

スモールビジネスにとってはこれは死活問題だ。怒ったユーザー達は他システムがダウン中なのになぜか動いているIntuitのサポート掲示板に殺到し、商品企画部らしい連中が懸命に相手をしていたが掲示板は炎上状態になっていた。

そして昨日、ようやく復旧したのは良いが、IntuitのCIOの説明によると全システムがダウンした理由が「通常メンテの際に間違って電源を落としたから」というお粗末な内容だった事が判明した。 (続く)

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Hard days night

Office

トラブル続きの出張から帰って一週間。

ワタシの仕事は出張中でも山のようにあるので出張ははっきりいって好きでない。 今回はノートパソコンが壊れた事もあり、帰ってからの仕事のたまり方は悲惨なほどだった。

タイムリミットぎりぎりなそういう時に限っていろいろ問題がおこる物で、おかげで今週はほぼ毎晩徹夜するはめになった。 毎日少しは寝るけど、続けて寝ると脳がぼやけてしまうので30分、1時間と少しずつ寝て、毎日平均3、4時間ぐらいの睡眠で過ごした。

これは実はヨットで長距離レースをした時に覚えたテクニックだ。昼夜ぶっ続けでヨットで走る場合、数時間ずつでクルー交代をする。 とはいうものの、自分の船だからスキッパーとしていつでも起きてデッキに上がれるようにしておかないとならない。 そのために少しずつ寝る事を覚えたのだ。

日中は部下に指示を出して手伝わせ、夜はヨーロッパと連絡し、ソファーで気持ち良さそうに寝ているカミサンをうらやましく思いながら、なんとか二つ重なっていた納期に間に合った。

昨日は久しぶりにベッドで普通に寝て、今日はまともな日曜日を過ごしている。

なんとかなるもんだね。 ほんとに。

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Not all is well

すでに何回か書いたけど、今やっている仕事はヨーロッパ各国の人たちとやってる。 諸事情があるというものの、各国のチーム間の連携はあきれるぐらい悪い。 

グローバルな会社というと、他の国へ進出して大きくなった会社というイメージがある。 だが各国の会社をM&Aして国際化した企業だとまた話はちがう。 もとは各国それぞれでまわってた部の寄せ集めだ。 思惑とか縄張りとかはもちろん、他にもいろいろ難しい問題がある。

一番問題なのはやはり賃金や待遇の格差だ。 欧州はかなり賃金の格差があって、上下を違う国の人にしてしまうと、ぺーぺーの部下が部長より給料が高かったりする。じゃあ部長さんの給料を調整できるかというと同国人たちからの兼ね合いがあってそうもいかない。 

海外に進出している日系企業だったら日本から来る駐在員はベースサラリーの格差はもちろん、手当だのなんだので現地の人間より相当高い給料をもらっている。 現地の人間にすればお大尽のような手当をもらっている駐在員との格差には少なからずわだかまりがあるだろう。 

ただ、駐在さんはそれなりの地位につくので待遇の極端な上下逆転とかはあまりないだろうし、なにかあってもどうせ短期でいなくなる。 それに現地のマネジメントは本国との格差を理解して職に就いている。 避けられない軋轢はあっても根の深い問題には発展しにくいと思う。 

でも欧州のように恒久的に格差がある状態で10年単位で一緒に仕事をするとなると根の深い問題になる。欧州の連中と一緒に仕事してきて、度を越した足のすくい合いや泥の掛け合いをいろいろと目の当たりにしてきたけど、根底にはやはり格差とか社会レベルの問題があるのが見えてくる。

グローバルだの何のといっても、結局人間のエゴの問題なんだよね。

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Petty

いやーここしばらく仕事がいっぱい過ぎて、ダメだこりゃ、ってところまでいってた。

キモのプロジェクトはそれなりのペースで進んでいる。でも他のくだらない問題にはほんとに困った。足を引っ張られたりするのだが、それを取り合わないでいると、今度はビジネスに損害を与えるような事でも平気で仕掛けて来る。 さすがに気が抜けない。 

困るのはこの問題、あまりにもレベルが低いのだ。こういう手合いをまともに相手をすると自分もそのレベルになってしまう。 かといって上に相談するにしてもつまるところ、ナントカ君が意地悪するんです、という事にしかならない。

だから自分で解決していかないとならない。 詳細は書けないが、ヨーロッパとか南北アメリカにまたがったスケールだけは大きな話なので、ハタから見てれば面白いかもしれない。でも内容はどこでもありがちなレベルの低い問題だ。  

そんなの無視すれば良い、というのも上手くいかない。 グローバルな組織でプロジェクトを押し進めていると自分からどんどんコンタクトを取って行かないとならない。 数カ国にまたがって言語も仕事の進め方も違う人間を集めてやっているので連絡を密に取らないと意思の疎通や進捗が保てないからだ。 だから問題を起こしている相手にも連絡を取らないとさらにギャップが大きくなり問題が悪化する。 低レベルな問題にも毎日飛び込んでいかないとならない。避けて通れないのだ。

これにはさすがに音をあげてしまったけど、見かねた上司が助け舟を出してくれた。 おかげで上司とツッコンだ話もできた。 

で、打ち合わせの上ある方面では一時退却する事にした。 これが意外と良いアイディアで、自分だったら思いつかなかったと思う。 これで一時にしろ問題が減れば良いのだが。

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True Colors

仕事忙しい。夜も寝ないでやっている。 

上が簡単にユーザーの仕様変更を受け入れてしまうのだ。というより、こちらがしたたかなユーザー側に翻弄され、仕様変更や追加に追い込まれている感がある。 しかも変更したら受け入れを確約するという状況に持って行けないのだ。

変更は内容によってはソフトの手直しなど軽く週・月単位の時間がかかってしまう。でも引き継いだ時、既に1年以上遅れていたこのプロジェクト、いまさら期日の変更は絶対に無い。 

そのあげく部門内でン億と長い期間を掛けて結果が出ていないプロジェクトはこれだけじゃないから、人材はそれらすべてに投入されてしまっている。変更の試作をするにも人手が無いのだ。

でもまぁそこをなんとかするのがワタシの腕の見せ所な訳だ。そりゃ忙しくなる。

ただ、ゴールが想定以上に遠い事に、上層部に焦りが出てきた。 ワタシも含めた幹部への強いプレッシャーの掛け方に現れてきている。

アメリカの会社のエグゼキュティブはワンマンタイプの人が多く、リーダーシップイコールゴリ押しとなってしまいがちだ。 うまく行ってない時はすでにプレッシャーがある。そこでさらに上から締め付けてもたいした効果はないのにだ。

プレッシャーがある時ほど求心力ってのが必要になる。ゴールを明確にし、環境を整え、「キミタチだったらできる」というポジティブなメッセージを送ればたいていのチームは能力以上の結果を出す下地になる。

逆を行って締め上げても大した結果は出ないだろう。 だから上からどうキツく言われようが下へはポジティブに伝えないとならない。

こういう時ってやはり人の本音というか本来の姿が現れるもんだ。 

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