FIREムーブメント

最近アメリカで密かなはやりになっているのがFIREムーブメントだ。

FIREと言っても火のファイアーではないよ。 Financial Independence and Retire Earlyの頭文字。日本語で言えば「定年以前に十分な資金をためて引退しよう」ムーブメントだ。

FIRE貯金

FIREムーヴメントの基本的な考えは「十分な資金があって無駄づかいがない生活ができればいつでも引退できる」だと思う。

これにはいろいろなアプローチがあるけど、一般的なのは、投資を運用すると平均4%の利回りが可能だから、年間の生活費の25倍の金額を貯金すればいい。というものだ。

米国でふつうの人が4%の利回りで暮らしていくにはどのぐらいの貯金が必要なのだろう。ざっと計算してみた。米国の平均所得は約6万5千ドル。この25倍というと165万ドル。一億八千万円相当の貯金が必要となる。

富裕層ならいざしらず、アメリカの中流階級にはこれはものすごい大金ですよ。だってアメリカ人の平均貯蓄額はたったの350万円だもん。しかもこの平均は富裕層の貯金額がかなり上に引っ張っていて、中央値はなんと50万円ぐらいしかないのよ。

そんな貯蓄できない浪費の国アメリカでこれだけの貯金を目指すふつうの人たちがいる。これにはちょっと驚かされた。

FIRE倹約

FIRE関連ブログを見ていると自分の貯蓄状況を公表している人たちが多い。他人の財布の中は気になるからそういったブログ記事は人気がある。

でも「自分の車は20万マイル走った15年物だ」とか「今月はたったこれだけの食費で暮らせた」といったケチ、ではなくて倹約ノウハウ記事もそれなりに人気がある。生活費が少なければ貯金も少なくてすむ。だから極力ムダのない生活をして貯金してさっさと引退しよう、という倹約思考もFIREムーブメントの特徴だ。

確かに無駄づかいを抑えて暮らすということに目覚めた人たちはみんな楽しそう。自分もちょっと見習いたいぐらいだ。

引退後の倹約も気になるところだが、これは低くて暮らしやすい地域に引っ越すという選択があるのでかえって楽かもしれない。例えばニューメキシコ州のアルバカーキ市は平均所得4万7千ドル。単純計算するとアルバカーキなら貯金が6千万円ぐらい少なくても平均の生活ができちゃう。

FIREムーブメントの将来

無駄遣いせず倹約貯金して働かなくても生活のレベルを落とさず人生を大いに楽しもう、という考えには自分には大いに共感できる。

でも長い目でみてどれだけ現実味があるのだろう。

FIREムーブメントは資金を運用して安定した利回りを得て収入とする。というのが大きな前提だ。4%の利回りが要だ。これってどうなのだろう。

たしかにアメリカの株式は長い目でみれば7-8%の成長率だ。かたやインフレが3-4%なので、その差、物価連動の利回りは4%というのは証明されている。

でも短い期間を見れば株は上下する。横ばいだったり下がったりする時期がある。

アメリカの株式市場はここ10年、株が上がり続けるブル・マーケットだった。乱高下があっても心理的には将来も上がり続ける、と思える。この将来を楽観する心理がFIREムーブメントの原動力だと思う。

でも株式市場は下降時期(ベア・マーケット)にさしかかっているとされているし、どこかのバカがトランプが唐突に貿易戦争をはじめたり、イギリスがBrexitで漂流したりと不安材料は増えている。

株式市場の成長率が長期間鈍り、貯金が長期に渡って目減りするようになった時、FIREムーブメントはどうなるのだろうか。その辺この先見ていきたいと思う。