ソーゾク問題

日本でもアメリカでも親が亡くなった際の相続問題ってよくあるらしい。相続時に発生する問題といってもいろいろあって、日本語で検索するといろんなのが出てくる。

不動産をめぐるトラブル
遺産分割の割合で揉める
遺産に借金がある
遺言の内容が偏っている
遺産の独占を主張する人がいる
寄与分で揉める
財産の使い込みや引き出しがある
遺産分割協議に参加しない人がいる
被相続人に子供がいない
相続人の人数が多い
愛人の子を名乗る人が出てくる

上記はたまたま見つけた遺産相続問題のよくある事例11選|知っておくべき相続トラブル対策 から引用したものだ。

残念ながらうちも例外では無い。よくある事なんだろうなぁ、とため息がでる。

現在進行形なのでもちろん細かいことは書けない。ただうちの親の名誉のために言っとくと親父はカタブツで愛人はいなかった。借金もなかった。遺言もなかったな。あと相続人は自分もいれて二人のみ。

相続問題は父親が亡くなるはるか以前、親父が入院して二、三週間もしないうちから始まっていた。その後状況は悪化するのみ。弁護士を立てるのは早い段階から考えていた。なので両親が亡くなり相続が発生した時点で代理人の弁護士に依頼した。あくまで自分の法定相続の権利を守るためだ。

ここに至る経過でいろいろと学ぶところがあったので、同じような目にあった人たち、特に在外日本人の役に立てば、と備忘録もかねてポイントをいくつか書いておきたい。

念のために書いてあることは自分のケースではなくあくまでも一般論ですからね。細かいことは自分で調べてください。

相続の知識を得る

自分はアメリカに40年以上住んでるアメリカ人なので日本の相続も税金のことも全く知らなかった。そこでまずは日本の相続と税金の事を勉強した。ネットで情報を探すのはもちろん、Kindle Unlimitedで電子書籍を読み漁った。

日本の相続には相続人の確定、財産の調査・確定、分割協議、相続申告と言ったステップがある。その上にさらにケース・バイ・ケースの例えば被相続人の預金を勝手に直前引き出ししてたらどうなるのか、といった事が関わってくる。

相続の各ステップでは士業と呼ばれる人たちに委託しないとならない事がいくつもある。その方々と話をする時点でも相続の流れがわかっていると話が早い。知っているのと知らないのでは大きな違いがあるのだ。

遺言があればなんでもありのアメリカと違い、日本の相続は法律による縛りがいろいろとある。だが日本の相続法は相続人それぞれの立場(配偶者、子供)に平等で公正であろうとするもので、基本的には何も難しく無い。当事者になったら絶対に知っておくべきだと思う。

あと、外国住まいの相続人は相続手続きの際、分割協議書と一緒に提出する書類が日本に住んでいる人とは違う。これも調べて知っておくべきだ。

税金の知識を得る

相続に関連する税金は、相続税、固定資産税、贈与税、そして相続した資産を処分する際の譲渡益にかかる所得税がある。実際の計算や申告などは税理士さんに任せるにしてもこういった税金はどういう仕組みなのかある程度理解しておくべきと思う。

特に相続税はいくらになるのか分かりにくい。相続税そのものは資産評価額の例えば15%(資産額によって変わる)だが、この相続税資産評価額の算出がわかりにくい。

相続税には相続人の人数で決まる基礎控除や配偶者控除がある。資産評価額も不動産は低く評価される事が多く、小規模住宅控除などがある。親が不動産を持っていると相続評価額は実際の資産額よりかなり低くなるのだ。

よって日本では相続税の資産評価は低めで、しかも一定額以上の資産でないと相続税が発生しない事になる。そして相続税はその一定額以上の部分だけにかかる、ということだ。

これも知ってるのと知らないのでは大違いだ。例えば他の相続人が節税のためと偽ってこちらに不利な分割を持ち出してきても数字を出してきっぱりと拒絶できる。

ちなみにアメリカでは超富裕層でもない限り相続税は全く発生しない。

自分の権利を把握する

遺言が無い場合、日本の法律では相続人の権利は平等に決められている。ただ、権利を譲ることは自由なので相続人同士の合意があれば相続人の誰かに有利な相続にできる。相続人同士が納得していればこうやって節税できますよ、と教えてくれる税理士さんもいる。

だがこの相続人同士納得してれば、というのは敵対する相続人に悪用されやすいと思う。親の意志だぞと強引に圧力をかけてきたり、隠し事をし嘘を言って騙して合意させたりと言った事が起きてしまいがちなのではないか。相続問題のほとんどはこれが理由なのだろう。

一旦合意して分割協議書にしたものを後から争うのはほぼ不可能だから自分の権利を把握しておくのはとても大切だ。

法定分割でも事情を考慮して他の相続人に余分に譲るというのはもちろんあるだろう。だがそれでも揉め続けるという事もある。譲る、譲らないというのは要は取引なのだからそこまでこじれたら撤回し、自分の権利を守るために弁護士を立てるのが最善だと思う。

弁護士を立てて法律に任せるとなるとあの時ああ言ったこう言ったというキリのない話は考慮されない。身勝手なこじつけも通用しない。その代わり弁護士や法廷は少なくとも法律で決められた権利を守ろうとしてくれる。

ちなみにアメリカでは相続人に遺留分のような権利は無い。遺言でペットに全財産を残した人の子供には何の権利もなく、遺言の無効を主張するぐらいしかできない。それに比べると日本は相続人の権利が尊重されていると思う。

親の資産を把握する

親に資産額を聞くなんて気がひける事だ。だから親の資産を知らない人は多いと思う。

アメリカに比べて日本は社会保障が行き届いていて、高齢者にはとても手厚い。それでも無料ではない。それに例えば民営の老人ホームに入るとなると相当なお金が必要になる。親にどれだけの備えがあるのかは知っとくべきだ。

自分は父親に早い時期から老後設計の話を聞いていて、幸い親には援助が必要ないというのはわかっていた。その流れで資産の内訳も聞いていた。

これはいざ相続になった時、親の資産を隠されないということでもある。あるはずのものが無くなっていればわかるのだから。そして資産が動かされたりしていたら克明に記録を取る事が大切と思う。

親関連の情報を全て記録するのも大切だ。自分は親が入院した後、しばらく日本の実家に帰っていた。その際几帳面な父親が金融・証券機関の情報やいろいろな書類をまとめておいてくれたので全てスキャンし、幾つもあるUSBメモリを全てコピーし、パソコンのハードディスクのバックアップもとった。

親父はパソコンを使いこなす人だったのでHDDにはいろんなデータが残っていた。

中身を見ているといろいろな事が見えてきてちょっと切なかったけど。

外国住まいだからと諦めない

外国在住だと日本での相続に自分でできる事が限られてくる。特に日本に口座が無いと相続した資産の送金まで日本の相続人に頼らないとならない。敵対的な関係だったらまず絶望的な状況だ。

幸い日本ではコロナ禍の間に税理士や弁護士にリモートで依頼する事が一般化したので、Lineやオンラインで相談受付をしてくれるところが多い。

リモート業務に慣れた相手なら時差以外は国内も国外も同じ事なので、国外からに気軽に相談や依頼ができる。最初の1時間の相談は無料というところが多い。

弁護士に依頼するには希望する依頼内容と案件の状況、そして概算の資産総額を伝えると見積りを送ってきてくれる。契約もオンラインでできるし、着手金はWiseで送れるので迅速に依頼する事ができる。アメリカで弁護士に依頼するより楽かもしれない。税理士や司法書士に依頼するのも基本変わらない。

日本では弁護士に相続の代理人を依頼すると、相続資産を預かり口座で受け取り、そこから報酬を引いた金額を送ってくる。だから敵対関係にある相続人に頼らなくてもよい。

もちろん弁護士にはそれなりの報酬を払わなければならないが、相続の手続きや分割協議の交渉も入れたら十分価値があると思う。

まぁ自分が弁護士料金が異様に高額なアメリカに住んでいるからかもしれないけど。